2 マウスピースの治療から見た様々な睡眠障害

2 マウスピースの治療から見た様々な睡眠障害

梅本丈二

福岡大学病院歯科口腔外科

 1.はじめに  皆さんは日々の睡眠に満足しているでしょうか? 最近、NHKスペシャルで睡眠不足が負債のように蓄積する「睡眠負債」が特集されるなど、睡眠の問題は日本社会でも注目を集めています。睡眠障害といえば不眠症や睡眠時無呼吸症候群のことを思い浮かべるかもしれませんが、マウスピースを用いて睡眠障害を治療することがよくあります。ここでは、マウスピースの治療からみた睡眠時無呼吸症候群などいくつかの睡眠障害についてご紹介します。

 2.睡眠時無呼吸症候群(SAS)  SASは睡眠中に無呼吸(10秒以上の気流停止)を繰り返す疾患です。その結果十分な睡眠がとれず、日中に強い眠気や集中力の欠如が生じ、居眠り運転などを起こしやすくなります。また、睡眠中の無呼吸に伴う低酸素血症を慢性的に繰り返し、循環器疾患などの合併症を生じやすくなります。  

特に仰向けに寝た場合、舌根が落ち込んで上気道が狭くなると、いびきが生じ、上気道が閉鎖すると無呼吸に陥ります。  

SASに対する治療の第一選択は持続的陽圧呼吸療法(CPAP)ですが、軽症~中等度の患者さんには口腔内装置(OA)がよく用いられます。OAを装着し下顎を前方に数ミリ前方に移動させることにより、舌根部~中咽頭領域が拡大し(図1、引用文献1)、いびきや無呼吸が軽減することが期待できます。 

 図1 OA装着前        OA装着後

      

  これまでに様々な形態のOAが考案されてきましたが、福岡大学病院歯科口腔外科では主に上下顎を固定させるタイプと、上下顎が分離し下顎が動かせるタイプの2種類を使用しています(図2、引用文献2)。

 図2 上下顎一体型OA    上下顎分離型OA  

  




3.睡眠時ブラキシズム(SB) 睡眠中に発生する歯ぎしりやかみしめを特徴とする下顎の異常運動です。SBが発生する原因は不明ですが、中枢性に生じる運動であることがわかっています。この運動により、起床時の咀嚼筋の疲労や頭痛、歯の損傷や歯周病の悪化が生じることがあります。こうした症状を軽減するためには、上顎の歯列に樹脂性プレート(歯科用スプリント)を装着します。 

 SASにSBを併発する患者さんに対して前述した上下顎一体型OAを装着すると、SASをコントロールできるだけでなく、SBが減少することが経験されます。福岡大学病院で経験した患者さんでは、歯の動揺や口内炎の多発がみられましたが、装着したスプリントはすぐに破損してしまいました(図3)。治療をスプリントからOAに切り替えたところ、口内炎とSBが消失しました。 

図3 口内炎            破損したスプリント 

 

  4.レム睡眠行動障害(RBD) レム睡眠中に夢をみても、通常は身体を動かす全身の骨格筋の活動が低下し、金縛りのように体は動かないようになっています。しかし、RBDではその骨格筋が動いてしまい、夢の内容に反応して大声で叫んだり、横で寝ている家族を殴ってしまったり、暴れてけがをすることもあります。本人や家族にけがの危険性がある場合は、薬物治療を行います。  

SASではレム期の無呼吸から覚醒した後、RBD様の異常行動が生じることがあります。福岡大学病院で経験した患者さんは、入眠中にふすまを蹴ったり、大声をあげるなどして妻につっかかることがあり、異常行動は夢と一致して出現していました。検査の結果、SASに伴うRBD様異常行動と診断されました(図4)。前述した上下顎一体型OAを装着すると、SASが改善するとともに、夜間異常行動も減少しました(図5)。 

 図4 OA層着前の検査所見    図5装着した上下顎一体型OA  

 

 5.おわりに  以上のように、SASに限らずマウスピースで治療効果が得られる睡眠障害があります。睡眠で気になることがあったら、一度睡眠検査を受けてみてはいかがでしょうか? 睡眠障害によっては、マウスピースで気軽に治療することもできます。専門の歯科で歯の型取りを受けて、マウスピースを作製してもらいましょう。取り扱いが簡便なためか、長期的に使用して下さる患者さんを多く経験しています。 


 (引用文献) 1)Umemoto G, et al. Treatment outcome of the two-part semi-rigid oral appliance in obstructive sleep apnea. Oral Sci Int 9: 49-54, 2012. 2)Umemoto G, et al. Therapeutic efficacy of twin-block and fixed oral appliances in patients with obstructive sleep apnea syndrome. J Prosthodont 2017.