医学祭によせて

医学祭によせて

朔 啓二郎

福岡大学医学部長

 医学祭おめでとうございます。皆さんの情熱(パッション)を発揮する時ですね。医学部受験から抜け出して、自分たちが企画・運営していく、これが学園祭です。私も医学祭として独立していなかった「七隈祭」で様々な活動をしていたので良く理解できます。昭和47-48年頃、今から40年前のことですから、つくづく時が経ったなと感じます。時間は、健康であろうが病気であろうが、若かろうが年取っていようが、勤勉なヒトにも怠惰なヒトにも、どんな状況のヒトにも一様にふりかかってくる、極めて暴力的なものですね。医学祭は君たちの人生の一瞬ですが、大切に、そして思い切って活動をすることを願ってます。

   今年の医学祭のテーマは、「アルコールによる健康障害~Drink Wisely 賢明に飲もう~」、大変良いテーマです。医学生が生活習慣を学園祭のテーマにするのが素晴らしいね。心臓病の世界では、アルコールの種類にかかわらず良い効果があるようです。アルコールは飲めば飲むほどHDL-Cがあがる、細胞の膜にあるトランスポーターABCA1 を介するコレステロール引き抜きを増加する、コレステロールエステル転送蛋白を抑えHDL-Cを上げる等。また、赤ワインには、細胞の酸化・老化を防いで動脈硬化の抑制に働く「ポリフェノール」という成分も含まれています。赤ワインがブームになったのも、この点が注目されたからです。102万人のメタ解析から、1日に飲むアルコールと総死亡の相対リスクの低下の関係を図1に示してますが、J-shaped relationがみられます。女性では、up to 2 drinks/day で18%低下、男性はup to 4 drinks/dayで17%死亡率が低下します。つまり、男女で量の違いがありますが、少量のアルコール飲酒は予防的で、飲みすぎると死亡率が増加します。最も1drinkの定義は人によって異なりますが、日本酒1合程度(あるいはビール中瓶1本)が適量でしょう。

    さて、皆さんは「SAKUビール」を知ってますか?心臓病予防のビール? これは、エストニアの有名なビール会社で、図1左上に示します。味はあまり感心しませんが、私と同じ名前のビールです。世界中でビール飲んだけど、日本のビールが最高にうまいね。

アルコール飲酒は心臓病予防になるとプロモートすべきではないですね。また、アルコールが入っていると誰もがアルコールとわかるから、ダブルブラインドスタディが組めないので、その効果は必ずしも明確ではないとされてます。日本動脈硬化学会はエタノール換算で1日25g以下にとどめるとガイドラインに記載されてます。日本高血圧学会の高血圧治療ガイドラインでは、エタノール量は男性で20-30mL以下、女性で10-20mL以下になってます(図2)。節度をもって飲酒することですね。

    さて、医学祭はあくまで課外活動です。アルコールと一緒で、飲まれないように。この活動を人生の糧とすることができるように、医学生らしく溌剌と頑張ってください。